ふつつかものですよ

結婚3年目 2018年12月女の子を出産。育児関連の書評、日常について綴っています。ふつつかものですが日々開き直って生きています。

書評『「学力」の経済学』~教育に科学的根拠(エビデンス)を取り入れよう

 ちょっとお堅めの本を読んでみました。

テレビ番組「林先生が驚く初耳学」で林先生が紹介して話題になった本だそうです。

 

「学力」の経済学

著者:中室牧子 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

 

著者は教育経済学者の中室牧子さん。

・・・といっても無知なもので、そもそも「教育経済学」という言葉を聞いてもどんな学問なのかイメージが湧きませんでした。(^^;)

 

 wiki先生によると

  • 教育と関連がある経済事象を取り扱う学問
  • 教育の経済的効果、教育の費用負担、教育における効率性と教育計画、教育の便益(=都合がよく利益のあること)に関する分析

との事だそうです。

 

筆者は本書の中で一貫して「教育に科学的根拠を」と訴えています。

今の日本では国の政策レベルであっても「教育に科学的根拠が必要」という考えが少なく、権威のある人間の主観的な発言が反映されがちだそうです。

 

例えば、定期的に『我が子を東大に入学させた親』とか『活躍するスポーツ選手の親』が、我が子にどんな教育をしたかを記した本が注目されますね。

最近だと子供4人を東大に入れたと話題の佐藤ママでしょうか。

 

しかし、著者はこのような話題性のある個人的な成功体験は大体が例外中の例外であり、あくまでひとつの事例。

大事なのは大量の事例を観察することで見えてくる規則性だと記しています。

 

ちなみに「子供の学力に最も大きな影響を与える要因」は「親の年収や学歴」。

実際に東大生の親の世帯収入は全体の57%が950万円以上で、平均値は1,000万円だそうです。

身も蓋もなーい!(°▽°)

つまり『我が子を東大に入れた』系の体験談を一般庶民に当てはめるのは適当ではない、ということです。

 

 この本では世界各国の「教育に関する実験」とその結果から見えてくる「規則性」「規則性から見える仮説」

また、教育経済学の視点から明らかになった「子育てにおいて知っておかないともったいないこと」が紹介されています。

  

目次(・以下は複数の項目より抜粋)

はじめに

第1章 他人の”成功体験”はわが子にも活かせるのか?
データは個人の経験に勝る

・東大生の親の平均年収は「1000万円」

 

第2章 子どもを”ご褒美”で釣ってはいけないのか?

科学的根拠(エビデンス)に基づく子育て

・教育経済的に正しい「ご褒美」の設計

 

第3章 ”少人数学級”には効果があるのか?

科学的根拠(エビデンス)なき日本の教育施策

・少人数学級は費用対効果が低い

 

第5章 ”いい先生”とはどんな先生なのか?

日本の教育に欠けている教師の「質」という概念

・「いい先生」に出会うと人生が変わる

 

補論:なぜ、教育に実験が必要なのか

・リンゴとオレンジ:比較できない2つのもの

 

 

以下印象的だった事

 
学力テストで高い点をとるより「非認知能力」を高めるのが大事

子どもの教育に時間とお金をかけるとしたら、いつが効果的なのか…

おそらく私も含め多くの人が小学校<中学校<高校<大学・・・と「年齢が上がるほどお金や時間を投資するべき」という考えを持っているんじゃないかと思います。

将来の学費に備えるために子どもが小さい頃は貯金!って話はよく聞きますよね。

 

しかし、研究データでは「小学校入学以前の幼児教育」に投資するのが一番効果的だとはっきりしているそうです。

 

かといって

要は小学校前から早期教育を施して学力を上げたらいいのね!…という訳ではないようです。

 

ここで、アメリカで行われたとある実験が紹介されています。

 貧困層からランダムに選ばれた58人の子どもに非常に手厚い「就学前教育」を施し、彼らと運悪く選ばれなかった63人の子どもについてその後40年にわたり追跡調査した、という実験です。

 

その結果…

就学前教育を受けた子どもたちは

  • 持ち家率
  • 自家用車の保有
  • 19歳時点での高校卒業率
  • 所得の額

が、就学前教育を受けなかった子どもに比べて高く、

  • 19歳時点での留年率
  • 生活保護の受給率
  • 逮捕回数

が少なかったそうです。

 

あくまで「質の高い就学前教育」を受けたというだけで、就学後は他の子どもと同じ条件に戻されるし、彼らが貧困家庭である事は変わりありません。

それを考えると物凄い効果です。

 

しかし、この実験ではもう一つわかったことがあります。

(中略)IQの差は、小学校入学前(4~5歳頃)にはそれなりに大きかったものの、小学校入学(6歳)とともに小さくなり、ついに8歳前後で差がなくなってしまっています。

『「学力」の経済学』中室牧子 P84

つまり

  • 就学前にIQを高めても効果は持続しない
  • IQの高さは学歴・年収・安定した雇用とは因果関係がない

ということです。

 

それでは何が彼らの人生に影響したのかというと、最後までやりなく力、誠実さ、忍耐強さ、社交性、好奇心の強さなど…IQや学力テストでは測れない『非認知能力』だといいます。

 

今回この本を読んで、この非認知能力について知ることができたのが一番の収穫でした。

 

非認知能力に関する様々な実験結果が載っているのですが…それを自分に当てはめてみると、私、学生時代非認知能力がすごく低かった…。(°▽°)

社会に出てから必要に迫られて鍛えられ、かなりマシになったように思います。

(非認知能力は成人後でも鍛えられるものが多いそうです)

が、これが学生の頃から身についていたら…と確かに思いますね。

 

そして、夫は非認知能力めっちゃ高いと思います。

夫は3人兄弟ですが、2人は大企業勤めで1人は看護師。

話していると同じ世代の社会人として尊敬する事がたくさんありらます。

 

そもそもお義母さんがすごく出来た人なのですが…

hututuka.hatenablog.com

 

ちょっと今度の帰省の時にどんな子育てしてきたか詳しく聞いてこよう。

そして本と照らし合わせてみたい…。

 

本書ではこれまでの研究でわかった、「非認知能力の中でも重要な2つの能力」とその伸ばし方についても書かれています。

 

ぜひ実際に読んでみてください。(^^)

 

 

 以前読んだ脳科学者の方の育児日記本でも「早期教育には意味が無い」と自分の子どもにさせていなかったけれど、こういう研究結果を知っていたんだろうなぁ。

hututuka.hatenablog.com

それどころか

親の教育意欲が過剰だった場合、教育意欲が全くない親に育てられた場合よりも、子供の達成動機がむしろ低くなることが知られています。

池谷裕二「パパは脳研究者 子供を育てる脳科学」P224)

という事は、親が変に早期教育を熱心にすると『非認知能力』が育たない危険性すらあるのかもしれません。

 

 

これ以外にも、教育の話題によくのぼる

  • 子どもをご褒美で釣っても良いのか?
  • 褒めて育てた方が良いのか?
  • ゲームをすると暴力的になってしまうのか?
  • 少人数学級にするべきなのか?

のような疑問にも、実験による科学的根拠を以て説明してくれます。

 

統計学の用語や考え方が分かりやすく解説されているので、統計学を知る入門書にもなりそうです。

 

中室牧子さんの別の本も読んでみようかな。

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法